閉じる

ニュース&レポート

  • トップ
  • ニュース&レポート
  • 特別インタビュー 「ネアカ、のびのび、へこたれず」 旭ファイバーグラス株式会社 代表取締役 社長執行役員 荒木 一郎 氏

特別インタビュー 「ネアカ、のびのび、へこたれず」 旭ファイバーグラス株式会社 代表取締役 社長執行役員 荒木 一郎 氏

 1956年に日本初のガラス繊維専門メーカーとして創業した旭ファイバーグラス株式会社は、「快適環境作り」を使命として様々な分野で事業を展開しています。本日は、同社の荒木一郎社長に、経営者としての方針や考え方、同社の取り組みや今後の展開などについて伺いました。

旭ファイバーグラス㈱ 荒木氏

風通し良く、心の通った社風を育む

―2022年3月に旭ファイバーグラス㈱の社長に就任されました。改めて、ご自身の経歴や大切にされる考え方などについてお聞かせください。

荒木 私は、三井物産㈱に30年以上勤務した後、ご縁があり2021年4月に吉野石膏㈱に入社しました。その後、10月に旭ファイバーグラス㈱へ移り、2022年3月に社長に就任しました。中学から大学まで剣道部に所属していたこともあり、剣道が自身の軸の一つとなっていると感じています。座右の銘は、柳生石舟斎の言葉である「昨日の我に今日は勝つべし」です。他者に勝つのではなく、昨日の自分自身に今日は勝てただろうか、明日には今日の自分に勝ちたい、ということを心掛けています。

―社長就任に当たって、社員の皆様へはどのようなメッセージを発信されたのでしょうか。

荒木 当社の社員には、「明るく、のびのび、仕事をしよう!」と常日頃から語り掛けています。「ネアカ、のびのび、へこたれず」という、三井物産㈱の社長を務めた八尋俊邦氏の言葉を参考にしています。仕事をしていれば難しいことや苦しいことは当然ありますが、元気に明るく対応しよう、難局はきっと打破できるさ、といった意味と解釈しています。また、情報は積極的に共有、開示することを約束しています。会社や取り巻く環境の中で何が起こっているのかを隠さず共有し、一人一人が主役であるという意識で考え、行動し、自由で率直な会社にしていこうと伝えています。私のように業界歴の浅い人など、様々な年齢・立場の方が抱く疑問や、あるいは提言に対して、素直に耳を傾けることをお願いしています。その積み重ねが、「変革」につながっていくと考えています。

 先人の教えも参考にしており、組織を経営する上で、元内閣官房長官の後藤田正晴氏が残した「後藤田五訓」を心がけています(図1)。「省益を忘れ、国益を想え」については、自部門だけではなく、目線を高くして会社全体のことを考えるように伝えています。その意識が、日々の事業活動を通じて社会に貢献していくことにつながると考えています。「悪い本当の真実を報告せよ」「勇気をもって意見具申せよ」も重要な要素です。最近、心理的安全性という言葉をよく耳にします。自分の考えを発言することには勇気が必要ですが、積極的に発言するよう促しており、的を射た良い意見であれば当然採用となりますし、そうでなかった場合にも声を上げた勇気を称えるようにしています。また、「自分の仕事ではないと言うなかれ」「決定が下ったら従い、命令は実行せよ」については、自部門のことだけを重んじるセクショナリズムは断固として排することに加えて、例え自分個人としては反対であったとしても、ひとたび決定した案件については、全体一丸となって成功に向けて努力することを指針としています。こうしたメッセージを通じて、風通し良く、働きやすい職場づくりに努め、社員を大事にする心の通った社風を目指しています。

荒木氏が経営の参考にする後藤田五訓

事業を通じて快適環境作りに貢献

―御社では、企業理念において快適環境作りを掲げていらっしゃいます。改めて、御社の取り組みについてお聞かせください。

荒木 当社は、企業理念として「私たちは人と地球の未来のために、快適環境作りに貢献します。」を掲げています(図2)。主力商品であるグラスウール断熱材は、細いガラス繊維を高い密度で絡み合わせたもので、空気を閉じ込めて動きにくくすることで熱が伝わりにくくなるため、高い断熱性能を有しています。また繊維状のため吸音機能も併せ持っているほか、軽くて施工が容易という特長もあります。まさに、当社がお届けするのは、「暖かさ」「涼しさ」「静かさ」「軽さ」といった快適環境を実現する製品と機能です。グラスウール断熱材に主に使用するのは、リサイクルガラスやガラス工場で出た端材などを使用した「カレット」というリサイクル原料です。そのままでは廃棄されてしまうものに新たな命を吹き込み、再生して使用することで、地球環境の保護や持続可能な社会づくりの一翼を担っています。

旭ファイバーグラス㈱記号理念

近年、地球温暖化防止に向けたCO2排出量削減など、環境保護の動きが加速しています。この企業理念は従来から長く掲げているものですが、環境に対する社会の要請の高まりとともに、当社が生業として続けてきたことがより重要性を増してきたと感じており、誇らしく思っています。

―住宅用グラスウール断熱材以外にも、幅広い商品を取り扱っていらっしゃいます。

荒木 商品ラインアップとしては、吉野石膏㈱と共同開発した耐火遮音間仕切り壁用の断熱・吸音材「アクリアスタッドコア」、高層ビルやホテルなどの空調用ダクト「ダクトエース」、優れたデザイン性や高い耐久性を実現した屋根材「リッジウェイ」、自動販売機や家庭用冷蔵庫に用いられる真空断熱材「ビップエース(VIP-A)」など、住宅用から産業資材用まで多岐にわたります。

 これらの製品は、湘南工場(神奈川県高座郡寒川町)、中部工場(愛知県豊橋市)、九州工場(福岡県北九州市)の三つの拠点で生産しています。湘南工場は、1957年にガラス繊維工場として操業を開始し、多くの種類のグラスウール断熱材を生産する主力工場です。また、産業資材事業における加工生産設備も有しています。九州工場は、拡大するグラスウール断熱材の需要に対応するべく1992年に操業を開始し、九州だけでなく中四国や関西エリアへの供給を担っています。中部工場は、高性能グレード「アクリア」専用工場として、安全、クリーン、革新、省力・省エネを基本コンセプトに2019年より操業しています。

―研究開発において目指されている方向性についてお聞かせください。

荒木 湘南工場の敷地内には全ての事業の研究・開発を担う技術部門があり、環境貢献企業として快適環境作りを実現し、断熱・機能材において業界をリードする商品・技術を継続的に創出していくことを目指しています。研究開発戦略として、グラスウール断熱材における最高の断熱性能を実現する最先端技術の追求や、細繊維技術の応用による高性能な断熱・吸音製品の展開などを掲げています。

「当たり前」を疑うことが、現状打破の糸口

―2021年11月、2022年7月にグラスウール商品の価格改定を実施されました。当時の状況についてお聞かせください。

荒木 私が吉野石膏㈱に入社した2021年は、ウッドショックによる木材価格の高騰をはじめとして、資材や原材料の価格が軒並み上昇しました。特に、エネルギー価格がコストに直結するメーカーにとっては非常に厳しい状況が続き、秋頃から各社における製品の価格改定が相次ぎました。当社も例外ではなく、先行きを見通す限り値上げは避けられない状況で、2022年2月に2013年以来9年ぶりとなる価格改定に踏み切りました。その後、2022年3月に社長に就任しましたが、その直前の2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まりました。その後のエネルギー価格の更なる上昇や、円安の影響も相まって、製造コストは更に上昇しました。就任直後ではありましたが、収益改善待ったなしの状況となり、2022年7月に二度目の価格改定を打ち出しました。社員からも、短期間で二度の値上げは難しいといった声が聞かれたほか、お客様からも厳しい言葉を頂戴しました。値上げを避けるために必死に考え、コストダウンなどできることは全て行いましたが、企業としての自助努力をはるかに超える状況であると判断し、覚悟を持って決断しました。

―困難な状況を打開するためには、どのようなことが必要だとお考えでしょうか。

荒木 重要なことは、これまでの常識や当然とされてきた考え方を疑ってみることだと考えています。例えば、以前のガソリンスタンドは、店員がガソリンを入れ、窓を拭き、灰皿を交換していましたが、今はセルフ式が主流となっています。今となっては、なぜガソリンを自分で入れなければいけないのかという感覚はないと思います。世の中が求めていたのは、ガソリンを入れてくれるサービスではなく、ガソリンが満タンになるということでした。

 当社の例ですが、アクリアは「純白」であるということが常識になっています。グラスウールはガラスを高温で溶かして綿状にし、接着剤を吹き付けてから焼き固める製造工程があり、どうしても煤(すす)汚れが生じてしまうことがあります。ある程度の汚れなどは断熱・吸音といった性能には全く影響しないのですが、外観不良という扱いで不合格とすることがあります。性能に影響がないので、良品として認めて頂ければコストダウンにつながります。お客様にご説明してみてはどうかと社内で提案しているのですが、「アクリアは純白であり、汚れがあってはダメ」といった社内の意見(固定観念)を覆すまでには至っておりません。これは提案不採用の例ではありますが、これまで当たり前であったことについても頭を柔らかくし、思うところあれば、臆せず異を唱えてみることで、現状を打破するための糸口が見出せるのではないかと思っています。

困難があっても、勇気をもって挑戦し続ける

―取り巻く環境が大きく変化し続ける中、メーカーとして果たすべき役割についてはどのようにお考えでしょうか。

荒木 第一に、事業を継続し、期待されている性能・品質の製品を生産し、世の中に送り出し続けることです。その次に、安定した価格でお届けすることです。「値上げは受け入れるが、欠品はダメである」というお客様はいらっしゃいますが、その逆はおられませんので、この順番が変わることはありません。当社のようなメーカーが事業を継続するためには、製品を生産する機械設備を整備し、機能を維持していくことが必要不可欠です。今年、湘南工場に2基備えているガラス溶解炉のうち1基を修理するため、約40日間生産が止まりますが、販売数量は前期と同水準を計画しています。その実現に向けて、生産効率の向上や経営効率の改善を図っており、一つの策として数多くある品種の集約化に取り組んでいます。様々なご要望にお応えする中で品種が増えてきましたが、1カ月当たりの販売実績をみると、実績があるのは全品種の80%程度で、更にそのうちの15%が販売実績全体の9割を占めていました。多種多様な品揃えを優先してきた部分にメスを入れて、品種を統合し、連続生産にすることで効率化を図っています。当然、これまで提供していた製品がなくなることへのご意見も頂いており、お客様との対話を丁寧に進めながら実施しています。

―最後に、今後の経営課題とともに、業界の皆様へのメッセージをお聞かせください。

荒木 物流の2024年問題への対策が喫緊の課題とされており、2030年には約35%の荷物が運べなくなるとの試算も出ています。ただし、私はこの35%に対して、人間は運ぶための知恵を出すと思っています。重要なことは、考え抜いた上で正しいと思ったことには、勇気をもって挑戦し続けることだと考えています。

 当社においても、住宅・建築物省エネ化の加速や社会課題の解決を見据えて挑戦を続けています。具体的には、建築用真空断熱材の日本産業規格(JIS)A 9529の認証を国内で初めて取得し「VIP-Build®」を、昨年5月に発売しました。薄さと高い断熱性能を兼ね備えた新しい断熱材として、更なる性能向上に努めていきます。また、高断熱化の普及に向けて、軽量ですき間なく施工できるブローイング製品の生産能力増強を図ります。新築はもとよりリフォームにも適した断熱工法で、既存住宅の省エネ化に資する製品として、普及に努めていきます。加えて、2030年以降に想定される使用済み太陽光パネルの大量廃棄に備えるために、太陽光パネル由来のリサイクルガラスを新たな原材料とするべく、調査研究を重ねています。

 環境が目まぐるしく変化する時代ではありますが、事業継続を第一に製品の安定供給に努めてまいりますので、引き続き断熱については旭ファイバーグラスにお任せください。困難な局面においても、常に「ネアカ、のびのび、へこたれず」の精神で、これからも新しいことに挑戦し続けてまいります。

―本日はありがとうございました。

旭ファイバーグラス㈱アクリアアルファ広告